会社案内人材育成方針

櫻井精密工業株式会社
常務取締役
佐々木愛子

──櫻井精密工業の人材育成方針について教えてください。

まず中途採用のスタッフは、きちんとしたスキルを持った方に弊社に来ていただいているという状況があります。こうした熟練のスタッフの場合は、育成というよりも現場でさらにスキルアップしてもらうという方針です。また、実習生として海外から来日してくれているような外国人スタッフの場合は、また違った方針で育成を考えています。

──育成にはふた通りあるということですね。

人材育成という点では実習生への研修が中心になります。製造業のオペレーターは、基本的に黙々とやらなければいけない作業です。勤務中は私語も禁止ですし、緊張した状態で作業しないといけないので、とても張り詰めた現場です。なかにはずっと立ちっぱなしの工程もありますし、決して楽な仕事ではありません。そこで、プライベートも含めて仕事以外の部分もフォローしてあげるのが私たちの役目だと考えています。

──どのようなフォローをされているのでしょうか。

実習生の場合、単身で来日している者もいますし、家族で来ている者もいます。当然、最初は日本での生活で困ることもでてきます。国際貢献というほどの大げさなものではありませんが、彼らは日本に来て、技術をつけて、日本のカルチャーを勉強してくれます。何年かしたら国に帰るという人もいますし、日本が大好きになって、日本で結婚して帰化する人もいます。

──日本での生活に慣れ親しむように接している。

実習生のスタッフは若い方が多いので、自分の息子のようなイメージで接するようにしています。彼らがより働きやすく、トラブルなく生活できるよう、どんな役割ができるかを考えています。仕事場は男社会ですし、男性同士ですから競り合ってしまったり、ぶつかってしまったりとか、どうしてもいろいろなことが起こります。そこに女性が介入することで、いい意味で緩和したりできるのでは、と考えています。

──気持ちの部分のケアも大事なのですね。

言葉の問題もありますが、外国人と日本人のスタッフをうまく調和させることも大事だと思っています。そのためには、少しおせっかいなくらいケアを手厚くするよう心がけています。彼らにとっては異国の生活ですから、こちらの暮らしに慣れ親しんでもらうことが職場環境の向上とイコールになってくるのではないでしょうか。

こまやかな気配りが、モチベーションの向上にもつながる

基本的に、生活のベース(居住環境)を整えることが良い仕事に繋がっていくと考えています。そのため、会社で実習生たちに適切な住居を提供し、母国と日本の違いを理解してあげること。 例えば、家に上がるときには靴をぬぐーーこの動作一つを考えても日本と彼らの国では大きな違いが生じます。そういう細かい部分でもを一つひとつ、場面場面で対応してあげることが重要だと思っています。

──その場ですぐに対応するのが大事なんですね。

弊社社長の櫻井が細やかな気配りをしてくれるタイプで、率先して従業員たちのケアをしてくれています。私はその補佐として、社長の意図と、彼らの望みとをより良くつなげていくことが役割だと思っています。

──いい意味で家族のような職場を心がけているのですね。

立場としては、そうですね……お母さん的な部分もあるかもしれません(笑)。会社に来てみんなの顔を見て、彼らの心身のコンディションをできるだけ把握するように努めています。彼らも「見てもらってる、気にしてもらってる」と感じることによりモチベーションも大きく変わってきます。工場内の作業はけっして楽な仕事ではないですが、それでも弊社の実習生たちの定着率は悪くありません。これからも、仕事や待遇の面を含め、従業員たちの生活面でのケアやコミュニケーションには気をつけていきたいと考えています。

──そうしたコミュニケーションが従業員の安心感につながるのかもしれません。

弊社の櫻井も「俺も海外に行けば外国人だ」という感覚の人間なので、そこに隔たりはないんです。ただ、言葉も風習も違っているなか、同じ仕事とはいえ彼らの方が苦労を感じることもいろいろあると思います。仕事も生活面も含めて、そういうことを一緒になって考えながら取り組むことが大切なのではないでしょうか。